「吉野川の治水に携わる一人として責任をもって仕事をしています」
国土交通省 徳島河川国道事務所 工務第一課
青葉(あおば) 隆仁(りゅうと)さん(25歳)
青葉(あおば) 隆仁(りゅうと)さん(25歳)
私は現在、国土交通省 徳島河川国道事務所で吉野川と支川の旧吉野川・今切川の工事に係わる仕事をしています。具体的には、堤防がない地区に堤防をつくるための築堤工事や、地震・津波の被害を軽減させるための耐震工事の発注、また、工事を進めるにあたり施工ステップの計画、設計図の作成をはじめ、堤防の機能を担保するために必要不可欠な設計業務の発注を行っています。
私は県外出身で、この仕事を始める前はよく川のほとりのベンチに座って、都会の喧騒から離れて、のんびり水の流れる音を聞いていました。また、観光地に近い川は人が集まるよう景観に配慮して整備されている公園が多いこともあり「水辺公園めぐり」をするなど、川に親しんでいました。今の仕事に携わる2週間ほど前に初めて吉野川下流を目にしましたが、海と見間違えるほどの川幅があり、その迫力に圧倒されたことを覚えています。
仕事を始めて、百メートル少々の堤防をつくるために、かなりの労力とお金を要していることを目の当たりにしました。また、似たような堤防が続いているように見えても、実は一部だけ堤防ができていない、一部だけ災害への対応ができていないという場所が多く残っていることを知り、過去に吉野川の治水事業に携わってきた方々の偉大さを痛感するとともに、自分もその一人として責任を感じるようになりました。
吉野川は災害が起こるたびに洪水を起こし、昔の人が知恵を絞って治水事業に取り組み、まちを守ったこと、一方で洪水の恩恵を受けて藍作が栄えてまちが発展したことなど、様々な歴史とともに現在の暮らしがあります。また、上流の急峻な地形を活用したラフティング、下流の穏やかな流れの中でのクルーズ観光など、レジャーが楽しめる場所としても発展している、とても魅力的な川だと思います。
若い世代の方々にも、吉野川に興味を持ってよく観察して欲しいと思っています。そうすると「何か違和感があるな」と気づくことがあると思います。その違和感の正体を探ることが、将来的に吉野川や徳島県を守るという達成感につながると考えています。