2024年4月5日金曜日

Vol.7徳島県立博物館 学芸員 井藤 大樹(いとう たいき)さん

vol.7
美しい川や海に恵まれた徳島は魚の宝庫。
学芸員として魚の魅力、自然の豊かさを伝えます
井藤大樹さん
 夏休みに開催している「交流体験inよしのがわ」の「おさかな博士の川魚かんさつ」は毎年人気のイベント。令和1年(2019)からおさかな博士を務めてくださっているのが、徳島県立博物館学芸員の井藤大樹(いとう たいき)さん(35歳)です。
井藤さんは香川県小豆島生まれですが、2歳〜小3までお父さんの仕事の関係で、徳島市上八万町で暮らしました。文化の森はホームグラウンドで、「園瀬川で魚をつかまえて水槽で飼ってた」という井藤少年。「川に潜って魚を見ると、光に輝いてとてもきれいなんですよ」―おさかな博士のルーツはここにありそうです。
 近畿大学農学部へ進学した井藤さんは、日本の淡水魚研究の第一人者・細谷和海先生のもとで、コイ科 のオイカワやハスの仲間の系統分類の研究に打ち込みました。大学院を修了後、いくつかの職を経て、平成31年(2019)4月に徳島県立博物館に赴任しました。
 

子ども達に魚のつかまえ方を指導する井藤さん


 学芸員の仕事は、調査研究、資料の収集と保存、展示解説や出前授業などの教育普及と、なかなか多忙です。井藤さんの専門は川や湖沼などの淡水域に生息する魚類で、特にコイの仲間やホトケドジョウの仲間の研究をしています。なかでも、ナガレホトケドジョウは井藤先生の研究グループが新種記載したのだとか。また、県内の河川の魚類相や、徳島県沿岸やその周辺に生息する魚の分布についても幅広く調べています。
 井藤少年の魚好きを育んだ園瀬川は、現在は調査・研究のフィールドです。「市街地の河川にしては、すごくきれい」と井藤さん。絶滅危惧種のスナヤツメ南方種をはじめ、希少な魚も数多く生息しているとか。では、吉野川は?
 「吉野川は淡水魚の多様性が高い」と井藤さん。特に河口付近の汽水域が広いのが特徴で、川にすむ魚だけでなく、海にすむ魚、トビハゼをはじめとする汽水域特有の魚も見られます。干潟にはシオマネキやルイスハンミョウなどの希少な生物も多く、まさに生物の宝庫です。
 吉野川はとにかく広大で、調査はまだまだこれからだとか。ナガレホトケドジョウに続く新種発見があるかもしれませんね。楽しみです。

県民コレクション「県民としらべる!徳島の魚」では、
阿波魚類研究会と協同で県内の海や川で行った調査の成果を
紹介しました

井藤さんの研究グループが2018年に新種として記載。
また、愛知県と静岡県の一部に分布する
トウカイナガレホトケドジョウも
2019年、新種として記載しました
井藤大樹さんプロフィール
徳島県立博物館 脊椎動物担当学芸員。
1988年香川県小豆島生まれ。2016年近畿大学大学院農学研究科博士後期過程修了。博士(農学)取得。2016年~環境省近畿地方環境事務所吉野自然保護官事務所にて自然保護官補佐を務める。2017年~特定非営利活動法人日本国際湿地保全連合研究員。2019年~徳島県立博物館学芸員。
日本魚類学会、日本生物地理学会に所属。